【おすすめの本】 末岡多美子・著、『波濤を越えて』


末岡多美子・著『波濤を越えて』(医療文化社) 
[FResHU Library書籍番号①-7]

■書評:大坪久子(女性研究者支援室客員教授)

 この本は、いろんな読み方ができる本である。
  前半は、50年前、京都大学の大学院生だった著者が、当時フィアンセであった末岡登氏を追ってカリフォルニアへ神戸から船出するところから始まる。豪華客船でハワイ経由の半月の船旅だったというからうらやましい。夫君とともにスタートしたアメリカでの研究生活は、研究助手から大学院生、ポスドクへとキャリアを経て、やがてコロラド大学教授を最後に3年前に引退されたのだが、その間、筆者が見たこと、感じたことが、淡々としかも的確な分析を添えて述べられている。

 勿論、子育ての項も一章もうけてある。後半は、アメリカの女性研究者の歴史として、とても読みごたえがあるし、何より分かりやすい。1970年代以降段々増えてくる女性教授に対する、多美子氏のタイプ分けと分析が私にとっては一番面白かった。「コロラド大最初の女性教授Bさん」や「過渡期、同権時代の女性教授たち」の項は特にそうである。

 何がおもしろいかというと、日本の今よりほんの少し前の時代が、まさにそこ(35年前のアメリカ)に見られるからである。米国の女性科学者の実態についての第4章や女性差別を生み出す要因を分析した第5章、マサチューセッツ工科大学の女性教授の実状を扱った第7章は、今現在のアメリカの女性研究者の実態を少しでも知りたいと思う人には、大変役立つ入門書となろう。全編にちりばめられている「豆知識」は、アメリカの研究社会を知るためのとてもよいガイドである。

January 15, 2007