VOL.1 北海道大学名誉教授 大塚栄子先生(2006年9月)

研究の場を求めてアメリカへ

北海道大学は国立大学の中でも比較的早くから女子学生に門戸を開いてきた大学ですが、それでも私が入学した頃の女子学生の比率は新入生全体の3%程度でした。女の子が大学に入ることが今ほど容易ではなかったので、女子学生たちの意識は非常に高く、学習意欲に燃えていたように思います。

博士課程では核酸の合成を研究し、中でもポリヌクレオチドの合成に興味を持ったので、その分野の先駆者であったアメリカ・ウィス コンシン大学酵素研究所のコラナ博士の研究室にポスドクとして赴任しました。当時は就職事情が悪く、先のこともわからない状態で したが、担当教授のご尽力や親の理解など多くの援助があったからこそ実現した留学であり、せっかく得たチャンスを無駄にしてはい けないという思いで渡米したことを覚えています。コラナ博士は後に遺伝暗号解読の功績でノーベル生理・医学賞を受賞しました。コラナ研究室で最先端の研究に携われたことは私にとって大きな財産となっています。

思い通りにいかないことを大切に

66年に帰国した時は、その前年に薬学科が学部として独立したこともあり、 助教授の職を得ることができました。研究を続けるには企業の研究所に行くか大学の教員になるのが一般的ですが、就職には運・不運もあります。計画通りに行かない場合もあるし、チャンスも多くは ありません。私の場合はコラナ教授の知名度に助けられた部分もありますが、巡ってきたチャンスを確実につかめるかどうかで、その先の進路が変わることもあると思います。

それは研究活動にも通じます。特に薬学のような実験科学では思い通りの結果が出ないことがしばしばあります。しかし、偶然から生まれたものが良い成果につながることも少なくありません。自分が考えていることは他人も同じように考えている場合が多いのですが、偶然見つけたものはその人しか知らない。たまたま見つけたものの価値に気づくことが重要であり、気づくためには常日頃から意識と知識を磨いておくことが大切です。