VOL.2 本間さとさん(医学研究科 教授)・本間研一さん(医学研究科 教授、医学研究科長)(2009年1月)

さとさんのご意見  研一さんのご意見

夫婦ともに研究者であることについてのメリットは?

私たち二人は同じ研究室に所属し研究テーマが近いため、お互いに研究上のディスカッションが出来ることは一番のメリットです。しかしこれは反面デメリットとも考えられ、研究室でも家庭でも場所を問わず24時間いつでもディスカッションすることができる環境にあると、研究から離れることができずに精神的にしんどく感じることもあります。
私たちの取り組んでいる研究は生体リズム、サーカディアンリズムと呼ばれる生理学的研究ですから、昼夜を問わず連続して実験データをとり続ける場合もあります。また、突然徹夜で実験をする状況になり家に帰れないという場面になっても、その状況が理解できます。お互い全く別の研究をしていて状況が分からなかったらムカッとくるかもしれませんけど(笑)。論文も共著になり、お互いの業績になりますしね。そういう意味で、夫婦共に研究者でしかも同じ研究分野であることはお互いの状況をきちんと理解しやすく良いですね。研究はどの領域でも非常に専門化しているので、誰でも代われるわけではありません。間違いなく信頼できる共同研究者がいつでもそばにいるというメリットが大きいです。
あとは、研究において得意なところで「役割分担」をすることが出来ますね。研究費の獲得をする役と研究成果を発表・宣伝する役、のように。それは意図的に工夫したということではなくて自然とそうなりました。

同じ研究室に所属することで大変だと感じたことはありますか?

研究室の人間関係によりますね。我々以外にも夫婦で同じ大学・研究室に所属している方は北大内では結構いて、北大はそれを許容する環境にあるように感じます。周りがそれを許容するか、あるいは排除するかは環境で随分違ってきますね。もちろん、大学によってはそういうことを嫌うところもありますが。
また、年齢や役職によっても感じ方は変わってくると思います。今は研究科長という役職柄、我々は研究室内でほとんど顔を合わさないという日もありますからね。
一般的にカップルで同じ大学というのは難しいと思います。特に研究領域が同じ場合はポジションが限られていますからね。

先生方はともに北大でキャリアアップされてきましたが、他の大学へ移るという選択を考えたことはありましたか?

もちろんです。我々はずっと北大に所属することができラッキーでしたが、実は私自身生理学の大学院を終えてから5年間は職がありませんでした。小児科の医員として1年間、残りは解剖の教室に所属し、学位をもった研究生として研究を続けながら臨床のアルバイトをしていました。卒業9年後にようやく助手に採用されました。また、当時は今のようにポスドクというものは存在しませんでしたから職があるまで食いつないでこの近辺で職を見つけるという以外考えられませんでしたね。
我々がアカデミアに入った当時は職を得る選択肢が狭く限られていました。基礎研究をしようと思ったら助手のポストが空くまでただ待つ以外になかったのでタイミングが重要。私の場合卒業後たまたま空きがあって助手のポストにつけましたが、もしなかったら臨床へ行っていたでしょうね。
また、他大学へ行くことについては経済的な面(研究費)からも学問の継承性という面でも負担が大きいですね。今でもいえることですが助教がポストについて自由に研究をやらせてもらう場合も一人で行うことは難しいですよね。まして当時は教授のお手伝いが重要で、研究費も今のように若手用の枠はなく資金を得ることは難関でした。そういった事態を踏まえるとたとえよその大学にポストがあっても応募することはあまり考えられませんでした。こういった制度は20年ほど前から変化し今のように自由になってきて良い面もありますが、多くの矛盾もあります。今の状況が良いかどうかは10年、20年たってみないとわからないかもしれません。

お子さんが小さかったときに、何か不満を言われたことはありますか?

私たちには子どもが一人いますが、「食事中に研究室の運営の話をしないでほしい」と言っていました(笑)。かまってあげられない時はストレスを感じていたようでしたが、家族サービスをするなど、どこの家庭でもあるようにフィードバックをしながらやっていました。
小さい頃には「普通の家に育ちたかった」と言っていましたね。私たちにとってはごく普通のつもりなのですけど(笑)。不満を感じていた時にはよく話を聞いてあげるなどして適切に応じていました。
まぁそういう経験をしていた方が大きくなったときに活きてくると思います。むしろそういうことで鍛えられた方が大人になったときに役立つかもしれませんしね。